【社長のつぶやき】と題して、なるべく素の感情、言葉で私の考えを不定期で発信していきます。文字ばかりになるので読みづらいかもしれませんがご容赦ください。
初回はレンジャーシステムズのスローガンとして掲げている「We are the Last Resort」に込めた想いと背景を紹介します。これを読んで少しでも当社に興味を持っていただけると幸いです。
怒りがキッカケ
いきなり穏やかではない言葉から始まりましたが、Last Resortという言葉は私が感じてきた怒りの蓄積から生まれました。積もりに積もってダークサイドに落ちかけた時、冷静になって怒りの根っこを考えていたら閃きました。
では、私は何に怒っていたのでしょうか。具体的な組織・人物が特定されない程度にオブラートに包んでご紹介します。
- 提案を盗まれ、盗んだNIerは自力で納品できず、果てしなきPJ遅延の果てにお助けレンジャー事件
- 機器を売るだけ売ってトンズラするNIer、モノだけ手元にあって設計も構築もできず立ちすくむ通信事業者にお助けレンジャー事件 などなど
とある通信事業者のRFPに、当社が得意としていたとある技術が含まれていました。当時、この技術を扱えるNIerはごく僅かだったこともあり、共同提案の要請をいただきました。我々のような小さい会社でも頼ってくださり、この時は本当に嬉しかったです。とても光栄に思いました。
先方オフィスに伺い、提案する装置についてレクチャーしたり、ホワイトボードに構成図を描きながらコツコツと提案を固めていき、お互いに信頼関係が醸成されていくのを実感していました。
そしていざRFP回答!のタイミングでハシゴを外されました。受注しても君らには発注しないと。
そして彼らは無事コンペに勝利して受注。
「あ~、それで怒ったのね?」と思いましたね?
確かに怒りは感じましたが、脇が甘かったのも事実です。座組が解けないよう、他にできることはいくらでもあったはずです。「若さゆえの過ち」ってやつだと思って当時は受け入れました。
怒ったのはその後です。
RFP発出元の通信事業者から救援要請が。
要約するとこんな感じです。
- まずレンジャーが裏にいると思っていた。
- 発注したのに設計できるエンジニアがいない。
- 提案を作る際に使用したサンプルデータで設計を進め、検証で行き詰った挙句、「このデータはレンジャーから提供されたものだ!」と責任転嫁。
- もう納品期日から半年が経過している。
これを聞いてプッツンしました。後になって思うと、失注したからといって放置していたことも反省しなければなりませんが。
結局我々が通信事業者側のチームに業務委託で参加し、1年遅れでプロジェクトは完了しました。この話、誰が一番得をして、誰が一番損をしたのでしょうか。それを考えるとまた怒りが湧いてきます。
これは大変シンプルです。物を売るだけ売ってエンジニアリソース不足を理由に構築支援を拒否。あとはお客さんの好きなようにどうぞ~というパターンです。このパターンめちゃくちゃ多いです。
SIer, NIerの「I」はIntegratorです。そこにアイはあるんか?
これも結局どうしようもなくなった担当者から救援要請があり、しっかりお助けレンジャーしました。
なぜこのような悲劇が繰り返されるのか
こういった怒りと悲しみの繰り返しを何度も見てきて、NIerという業種の存在自体に嫌悪感を抱いていた時期もあります。(レンジャーもNIerですが。)
ただ、思ったんです。自分の仕事で誰かを不幸にして喜ぶ人なんて(そんなに)いないはず。きっと。たぶんそう。と。
ではなぜ、このような不幸が繰り返されるのか、それは仕組みにあると考えるようになりました。
インターネット通信は今や社会インフラです。殆どの家庭、企業に行き渡り、電気や水のような存在になりました。
スマートフォンもほぼ全ての人が持っており、モバイル回線全体の契約数は人口を優に超えています。
一通りサービスが行き渡った今、「安くて」「大容量」「高品質」なサービスを求める方が多いと思います。安く快適に動画観たいですよね。
ユーザ数の伸びが鈍化(=収入の伸びが鈍化)した限られたマーケットの中でユーザを獲得するために値下げ合戦が繰り広げられる。自販機のジュースは値上がりするのに、通信サービスは上がるどころか下がる状況です。だとすると投資もままならないことは容易に想像できると思います。
一方、NIerも毎年売上目標が立てられます。上場していれば毎年増収を求められるでしょう。そもそも儲かっていない顧客に対して馬鹿正直に寄り添って提案していたら短期の目標達成なんてできないんです。
自身が所属する会社のため、自身の評価のためを思えば、無理矢理にでもモノを売らないといけないんです。コストを圧縮しなければならない事業者と、とにかくモノを売らなければならないNIerの歪なバランスが悲劇を生んでいるのだと考えます。
我々はどうすればいいのか
まず、我々は馬鹿正直です。(だと思っています。)
ではどうすればいいのか。簡単な話、短期の売上目標に固執しなければいいんです。そのために会社経営のステークホルダーを絞ること。ましてや事業に直接関与しないステークホルダーを持つべきではないと考えます。
固執しないといっても最低ラインは必ず設けます。ただ前年比n%みたいな比較は無意味だということです。目先の利益よりも5年後、10年後を見据えた信頼関係の構築に努めることが、我々のすべきことだと考えています。(その中で右肩成長を実現できたら理想的ですが。)
信頼関係の構築に必要な「傾聴する姿勢」
では、どのように信頼関係を築くのか。これも簡単な話、課題認識を共有して共に乗り越える。これの繰り返しだと考えます。
これもよくある話で、NIerは言われたことしかやらない、言われたことも断る。そんな風に思われることが多いです。残念ながらこれは事実です。
下手に風呂敷を広げた結果、工数が膨らんで収益が下がったり、場合によってはプロジェクトを途中で放棄しなければならない。そんなリスクが潜んでいるのも理解できます。
ただ、それはお互いの信頼構築を怠っているだけではないでしょうか。
私が人の採用をする際に最も重視している点は「傾聴する姿勢」の有無です。相手の話を聞くこと、相手を知ろうとする姿勢があれば、自然にお互いの信頼関係が生まれてくるはずです。その中で、相手が何に困っているのか正確に理解すること、困っていることに対して自分がどのように役に立てるのか伝えること。そして議論することで信頼関係は強固になり、お互いの立場を尊重した仕事ができるようになるのではないでしょうか。
お互いのリスペクトと期待値のすり合わせができていれば、責任範囲がどうとかいう話でトラブルになることはまず無いです。ただ、前述した通りそこまでしっかり寄り添うNIerはなかなかありません。
ちなみに、私の考える傾聴する姿勢の真逆はこんな感じです。信頼なんてできるはずがありません。遭遇したら距離を置くようにしています。が、結構いるので困ってます。
- 自分のことばかり話す(隙あらば自分の話にすり替える、間を置かずに話し続ける なども含む)
- 相手の話を聞く前に提案する内容(結論)を決めている
- 議論する前に予防線を張る
- しつこい
辿りついたレンジャーのスタイル ~Last Resort~
ここまで私が溜め込んできたNIerに対するストレスを書き連ねてきました。
ただ、これは良い反面教師だなとも思えるようになってきました。長い道のりでしたが。
この反面教師をしっかり活かしてレンジャーの存在意義、スタイルを見つめ直した結果、最初に思いついたのが「Gateway of last resort」という、ネットワークエンジニアなら誰でも知っている単語でした。(知らない方は検索してみてください)
行く当てが無くなった際に辿りつく最後の拠り所。そんなNIerとして通信業界で信頼される組織にしたい。その想いから「Last Resort」を柱にして「We are the Last Resort」という言葉に辿りつきました。
名実ともに通信業界のレンジャーを目指して参ります。